2018.12.31
ところで歯周病と糖尿病は全く違う病気のように思えますが、実は密接に関係しています。糖尿病は血糖値が慢性的に高くなる病気で、日本では糖尿病予備軍を含めると2000万人が罹患していると言われています。糖尿病は、体内で栄養を取り込むために必要なインスリンというホルモンが効きにくい状態になったためにブドウ糖が有効に使われず、血糖値が高くなっている状態のことで、症状が進行すると網膜、腎臓、足の神経の細い血管や大動脈になどに傷害を引き起こします。そして、それらの「糖尿病合併症」が日常生活の質に大きく影響を及ぼしてくる病気です。最近では、この糖尿病が口の中の健康や歯科治療の成果にも関係があることが明らかになってきました。特に糖尿病と歯周病はお互いに悪影響を及ぼす関係がわかっています。歯周病の原因の一つに、歯の表面に付着している「プラーク」、一般的にいわれる「磨き残しの歯垢」があげられます。プラークは、主に細菌で構成されていて、その中には歯周病菌も含まれます。歯周病菌は歯と歯肉の隙間、「歯周ポケット」で増殖することで歯肉に炎症を起こし、最終的には自己免疫疾患で歯を支えている骨を破壊してしまいます。みなさんは歯ブラシをした時に出血するという事を経験したことがあると思いますが、それは歯周ポケット内にプラークが残っているという証拠です。
糖尿病と歯周病は相互に悪影響を及ぼします。歯周ポケット内にプラークが残っていると歯肉は炎症を起こし、炎症に関連した生理活性物質が体内に放出されます。するとインスリンが効きにくくなります。また逆向きの関連として、高血糖状態にあると、細菌感染からからだを守るための免疫機能が低くなってしまうため、歯周病が発症・進行しやすくなります。近年では、歯を失った後に行うインプラン治療の成功率や長期の安定性に、糖尿病が影響を与えていることも明らかになっています。 そこで、歯周病の治療を行い炎症を取り去る必要があるのですが、その基本になるのが、歯周病の原因であるプラークを取り除くプラークコントロールです。 プラークコントロールは、ブラッシングのアドバイスを歯科医師や歯科衛生士から受けて患者さん自信が行うセルフケアと、歯科医院で行うプロフェッショナルケアで成り立っています。プラーク(歯垢)が石灰化して歯に固くこびりついた歯石は、超音波スケーラーやハンドスケーラーという特殊な器具を用いて除去しなければならず、その治療はスケーリング・ルートプーニングと呼ばれています。このスケーリング・ルートプレーニングを、お口の歯周ポケット全てに行うことで血糖コントロールが改善することが明らかになってきました。
投稿者:さくら歯科クリニック