2019.02.03
全身の病気とお口の健康についてのつづきです。今回は脳血管疾患(脳卒中)について、お口の中がどんな状態だと注意が必要なのかについて、書きたいと思います。 2011年度に日本人の三大死因が変わり、長らく不動の第3位であった脳血管疾患は、肺炎にその順位を譲ることとなりました。しかし、日本人における要介護状態を引き起こす原因としては、依然として第1位となっております。脳血管疾患は直接の死因ではなくなったものの、手足のみならず口や顔の領域にも運動障害を引き起こし、ひいては口腔内環境の悪化を招くこととなります。また後遺症により飲み込み機能の傷害を来せば、二次的に肺炎を発症し死に至る可能性も考えられます。 このように、脳血管疾患により口腔内環境が悪化することは予想されますが、では、逆に脳血管疾患につながりやすい口腔内とはどのような状態なのでしょうか?この疑問に対していくつかの研究がなされていますが、それらをまとめると、歯周病になっている人の中で「歯を失った数が多い」「男性」「概ね65歳以上の若年層」という条件が挙げられるようです。ただし、いろいろな機関の研究結果をみるとこの限りではなく、「女性、高齢者、歯がほとんどある」という場合であっても油断は禁物です。歯周病の治療を受ければ脳血管疾患にかからないとは断言できませんが、その可能性を軽減するためにも、お口の手入れはしっかり行っておきたいものです。 まず最もわかりやすいところでは、男性において、自信の歯の数が24本未満の人は25本以上の人と比べて虚血性脳卒中(いわゆる脳梗塞)のリスクが1.57倍のなるという研究結果があります。次に「脳卒中で入院した患者」と「脳卒中以外の入院患者」、「健康な人」の3グループで歯周病検査を行ったところ脳卒中で入院した患者の歯周ポケットの深さが深く、歯周病がより重度であったとの報告もあります。さらに「男性」である、または「60歳以下」という条件を加えると、重度歯周病は脳卒中のリスクファクターとしてはたらくとのことです。また、他の研究でも、歯を支える骨の減少の度合いが脳卒中の発症に関連があるとしています。また、この研究でも特に65歳以下の男性で関連性が強いとされています。脳卒中と歯周病に関する研究では、脳出血よりも脳梗塞との関連性を示した研究結果が多いようです。 これらの関係に及ぼすメカニズムには不明な点が多いですが、高齢期になるよりも前から歯周病にかからないように、歯を失わないよう努めることが、脳卒中から命を守ることにつながるかもしれません。
投稿者:さくら歯科クリニック